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2010年02月24日

『リフレクティブ・マネージャー一流はつねに内省する』光文社新書

その昔、新人ナースだった頃、勤務部署とは違う場所で
カルテの中に間違いを見つけた。

私が勤務する部署が出した指示が、間違っていないかと確認したら
薬液の量が間違っていた。
いまのように、電子カルテの時代ではない。書いて伝え、見てうつす。
そんな作業が全盛期の頃だった。

ただでさえ、新人ナースは自分の部署ではない場所にいるだけでも緊張する。
それなのに、『うつし間違えを指摘する』ということは、ハードルが高い、難度も高い。
しかし、そこはいわねばならぬ。

このままだと、明日の朝、間違った量が患者さんにいってしまう。
あたりを見回すと、ナースはすべて出払っており、
そこには婦長と医師しかいなかった。

「あのう。」

恐る恐る声をかけた相手は、婦長さんだった。
返答は、ない。

「あのう、薬液の量なんですけど。」

返答は、ない。声が小さいのかと思った。
さっきより大きな声で言った。

「あのう、薬液の量が、」

といった瞬間、婦長さんは振り向きざまにこういった。

「うるさいわよ!!!」

そういって、またそっぽを向いてしまった。


いまから思えば、よほど機嫌が悪かったのか、
よほどタイミングが悪かったのか、
それとも、間違いなどあるはずがないと思ったのか、
新人のクセにと思ったのか、等々さまざまな理由は思い浮かぶが、
そのときは、ただただ
「こわい。」と思った。

薬液の量の間違いは、たいしたことがないのか?
いやいや、たいしたことあるだろう。
新人ナースは他部署の婦長に声をかけてはいけないのか?
いやいや、そんなことはないだろう。

頭のなかで、ぐるぐるいろんな思いが回っている。
その場に立ち尽くしていると、1人のナースが戻ってきた。

この人に言うしかない。
いやしかし、また怒鳴られるのか?
いや、それでもいわねばならんだろう。

「あのう。」

たぶん、蚊のなくような声だっただろう。
それでも、そのナースは応えてくれた。

「ん、なに?」

薬液の量が、指示と違うんです。

「あ、ほんとね、直しておくわー」

ああ、よかった。ほっとしすぎて泣きそうだった。
地獄に白衣の天使、だった。


それから半年が過ぎ、新人ナースは院内研修として
「接遇研修」なるものを受けることになった。

接遇研修委員長は、あの婦長だった。倒れそうになった。(笑)

回線がつながっていない練習用の電話の受話器を握り締め、
「はい、もしもし。」といいながら、「へんな病院」と思った。

あれから時は過ぎ、その病院をやめた私は、ある勉強会に参加した。
懐かしいその病院が会場だった。

受付にいくと、私が勤務していた頃はスタッフだったナースが
婦長になっていて、受付をしていた。
私を見るなり、冷ややかな視線を投げ、冷ややかな言葉を投げた。
一度も一緒に働いたこともなければ、先輩後輩の間柄でもない。

研修会終了後、まだその病院に残っている同期の桜である友人に
なんであの人ああなの?といった。

友人は、申し訳なさそうに言った。

「あれでも、接遇研修委員長やねん。」

この本を読みながら、きっと組織は、一番その研修が必要な社員に
研修の責任者をやらせるんだろうなあ、と思った。

私が経験した限りにおいて、それは費用対効果は低いです。

投稿者 Taniguchi : 2010年02月24日 14:23

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